「夢と魔法の王国」ディズニーランド、そしてディズニーシー。
世代を超えて多くの人々を魅了し続けるディズニーは、なぜこんなにも長い間、私たちの心を惹きつけるのでしょうか?
その秘密の一つは、ゲストに最高の体験を提供するために情熱を持って働くキャストの存在、そして彼らを育成し導くリーダーシップにあります。
今回は、そんなディズニーのリーダーシップについて深く掘り下げた書籍、福島文二郎さん著 「9割がバイトでも最高の成果を生み出すディズニーのリーダー」
こちらの書籍を参考に、組織のリーダーとして大切なことをまとめました。
接客業に限らず、チームをまとめ、部下を育成する立場にある方にとって、きっと参考になるはずです。ぜひ最後までご覧ください。
ディズニーにおける「マネジメントリーダー」とは?


東京ディズニーランドの組織は、部長からアルバイトリーダー、トレーナーまで、多様な役割を持つ人々によって構成されています。
- 部長
- マネージャー
- ユニットマネージャー
- ワーキングリード
- スーパーバイザー
- アルバイトリーダー
- トレーナー
書籍の中で、著者である福島さんは「マネジメントリーダー」を以下のように定義しています。
「マネジメントリーダー」とは、「人という最も大切な資源を導いて、成果を生み出す人」にほかなりません。
書籍「9割がバイトでも最高の成果を生み出すディズニーのリーダー」より引用
つまり、ディズニーにおいては、役職に関わらず、チームを率いて成果を生み出す全ての人が「マネジメントリーダー」であると言えるのです。
では、そんなディズニーのマネジメントリーダーたちは、具体的にどのようなことをしているのでしょうか? 順に見ていきましょう。
リーダーに求められる4つの条件


ディズニーのマネジメントリーダーには、以下の4つの重要な条件が求められます。
- 部下をどのように育てるか本気で考えている
- 部下の能力を最大限に引き出す
- 部下の個人的な意見や悩みに耳を傾け、相談に乗る
- 愛情を持って叱ることができる
マネジメントリーダーは、単に指示を出すだけでなく、部下や仲間を的確に導き、目標達成、顧客満足度向上、売上向上、そして部下のモチベーション向上といった、多岐にわたる成果を上げる存在でなければなりません。
それがマネジメントリーダーの役割であり責任になります。
そのためには資源を効率、効果的に管理し運用できる人材育成が不可欠となります。
「業績」よりも「人」を重視するディズニーの考え方


ディズニーでいちばん魅力あるアトラクションは何か?
それは「キャスト」です。
ディズニーでは、「キャストこそがゲストを幸福にする最も大きな力だ」と考えられています。
アトラクションという言葉には、人を惹きつけるという意味もあり、ウォルト・ディズニー自身も、「最も人を惹きつけるのは『人』である」と語っていたそうです。
一般的な組織では、業績が優先されがちですが、ディズニーでは「人」を何よりも大切にしています。
ドイツの心理学者の研究によると、集団になればなるほど「誰か頑張ってくれる」という考えが無意識に働き、手を抜く傾向にあると言われています。
私はいくつかの組織で働いてきましたが、そのような光景を何度も見てきました。
しかし、東京ディズニーリゾートで働く約2万人のキャストを見ていると、そのような様子は全く感じられません。
彼らは皆、自分の仕事に誇りを持ち、いきいきと働いています。
なぜ、これほどの大集団でありながら、手を抜くキャストがいないのでしょうか?
それは、キャスト一人ひとりが強い責任感を持っているからです。
もちろん、人間ですから、時には手を抜きたいと思ったり、気がゆるんだりすることもあるでしょう。
しかし、そんな時、彼らの頭をよぎるのは、
- 「ゲストにハピネスを提供するために、頑張っている他のキャストの足を引っ張ってはいけない」
- 「仲間に迷惑をかけてはいけない」
という思いが脳裏を駆けめぐるのです。
ディズニーのキャスト全員に「仲間を大事にする気遣いや思いやり」が胸に刻まれており、それが手抜きをしない大きな力になっているのです。
もちろん業績も大事です。
しかし、生産性や売り上げを上げるベースは、やはり人なのです。
部下がやる気になって頑張ってくれてはじめて業績が伸びる。
「業績を伸ばすのは人」
ディズニーは人を重視していることによって会社の倫理、すなわち組織の方向性を全員が理解しており、同じ目的に向かって働いています。
僕が以前働いていた会社では、組織の方向性が曖昧で、社員それぞれの考え方がバラバラでした。
余裕がなく、自分のことで精一杯という状況では、組織全体の雰囲気も悪くなり、業績も悪化の一途をたどっていきます。
人を大切にするディズニーだからこそ、キャスト一人ひとりが責任感と誇りを持ち、仲間やゲストに思いやりを持って接することで、結果として業績も向上し、長年にわたって愛され続けるテーマパークを維持できているのだと思います。
ディズニー流 部下の育て方


では、ディズニーのリーダーたちは、具体的にどのように部下を育成しているのでしょうか。
彼らは以下の目的をもって部下と接しています。
- 部下を堂々と見る
- リーダー間で基本的な見解を一致させる
- 必ず理由を伝える
- 部下をしっかり叱る
- 自分流を押し付けない
- 部下の権限を委譲する
- 常にキャストとコミュニケーションを取る
それぞれの項目について、詳しく見ていきましょう。
部下を堂々と見る
ディズニーの創業者であるウォルト・ディズニーは、パーク内に寝泊まりをしてパーク内をくまなく見ていたそうです。
キャストの仕事ぶりも熱心に観察と見ていました。
笑顔で接していないキャストを見つけると、マネジメントリーダーを呼び出して注意することもあったそうです。
ウォルトは社長であると同時にマネジメントリーダーとして、パーク内の状況やキャストの仕事ぶりを見ていたのです。
なぜ、多忙である社長のウォルトがそこまでしたのでしょうか?
それは、彼一人では夢と魔法の王国を築けないことを理解しており、一人でも多くのキャストに成長してもらい、自分の分身になってほしいと願っていたからです。
このウォルトの姿勢を受け継ぎ、ディズニーのマネジメントリーダーは、部下をしっかりと観察し、適切なフィードバックを行うことを重要視しています。
リーダー間で基本的見解を一致させる
あなたはこんな経験をして不満を感じたとはありませんか?
「あの人は良いと言っていたのに、この人はダメだと言う」
リーダーによって指示や判断が異なると、部下は混乱し、誰を信じたら良いのか分からなくなってしまいます。
ディズニーでも、そういうことが重なればキャストは混乱し、マネジメントリーダーや組織を信頼できなくなってしまいます。
ディズニーでは、このような状況を避けるため、髪の色や長さといった基本的なルールについて、マネジメントリーダー間で意見交換を行い、共通の解釈と認識を持つように努めています。
必ず理由を伝える
ルールだけを一方的に伝えても、相手は指示されていると感じ、不快に思う可能性があります。
仕事中はもちろん、プライベートでも、理由もわからずに注意されたら嫌な気持ちになりますよね。
ディズニーでは、ルールが存在する理由を丁寧に説明することで、キャストもゲストも納得し、理解してくれると考えています。
部下をしっかり叱る
近年、部下に遠慮して叱らないリーダーも増えていますが、部下を育成するためには、時には厳しく注意をしたり、叱ることも必要です。
ただし、部下を叱る際には、以下の3つの点に注意しなければなりません。
時間をあけない
部下が重大なミスをした場合は、時間を置かず、その場ですぐに叱ることが重要です。
その方が、部下は自分のミスの重大さを痛感し、二度と同じミスを繰り返してはいけないと心に強く思うからです。
行為、行動を叱る
叱るべきは、あくまでも誤った行為や行動であり、人格ではありません。
「おまえがだらしないからミスをするんだ」「おまえの性格が問題なんだよ」といった人格否定は、部下の反発を招くだけです。
ですので、叱るときは必ず、問題の行為や行動に対して叱ることが大切です。
3.人前で叱らない
部下を人前で叱ると、恥をかかされたと感じ、反省するよりも恨みを抱いてしまう可能性があります。
必ず、人のいない場所で個別に叱るようにしましょう。
自分流を押し付けない
新しい職場に着任したリーダーは特に注意が必要です。
以前の職場での成功体験から、自分のやり方が正しいと思い込み、部下に押し付けてしまうことがあります。
その職場に長くいる部下たちは、何年もの経験や仕事に対する誇りも持っているのです。
自分流を押し付けるリーダーに対して、反発心を抱き、モチベーションを下げてしまう可能性があります。
リーダーは、自分流を押し付けるのではなく、部下たちの力を活かし、気持ちに寄り添いながら、共に職場を良くしていく姿勢が大切です。
部下に権限を委譲する
マネジメントリーダーの権限を部下に与え、仕事を任せること(委譲)は、部下を育成する上で非常に有効です。
全ての権限を委譲することはできませんが、ある程度の権限を与えることで、部下は責任感を持ち、モチベーションも向上します。
権限の委譲は、リーダーと部下の間に信頼関係があるからこそできることです。
部下も役割を果たすことで、自身の能力向上を実感し、仕事への意欲も高まります。
ディズニーでは、たとえ失敗したとしても、それを成長の機会と捉えます。
失敗はリスクではなく、キャストを伸ばすチャンスと考えるのです。
権限委譲できる人材が多い組織ほど、有能な人材が多いと言えるでしょう。
- 積極的に仕事に取り組む部下に委譲する
- 好き嫌いで委譲しない
- 部下の情報を積極的に収集する
常にキャストとコミュニケーションを取る


ディズニーのリーダーは、どんなに忙しくても、部下とのコミュニケーションを大切にしています。
時間を作るためにどうすれば良いか、そのためには自分自身がどのような能力を高めるべきか、常に考えて行動しています。
僕が以前勤めていたガソリンスタンドでは、月に一度、店長会議がありましたが、「忙しくて手が回らない」「アルバイトが期待通りに動いてくれない」など、できない理由や言い訳ばかりを言う店長もいました。
僕も売上が悪い月は、言い訳を考えそうになることが何度もありました。
できない理由や言い訳を探している間は、店の業績も人間関係も悪化していく一方です。
しかし、店長一人だけでは限界があります。
ディズニーのリーダーたちは、できない理由を探しません。
どうすればできるのかを、リーダー間やキャストと相談しながら真剣に考えています。
常にキャストとコミュニケーションを取ることこそが、マネジメントリーダー自身とキャストのモチベーションを維持する鍵であることを知っているからです。
まとめ
今回は、ディズニーのリーダーシップについて、書籍「9割がバイトでも最高の成果を生み出すディズニーのリーダー」を参考にまとめました。
ディズニーが長年にわたり多くの人々に愛され続けるのは、リーダーやキャストたちの素晴らしい働きと努力があってこそだと改めて感じます。
僕が過去に経験した「業績を重視する企業」と、ディズニーの「人を重視する企業」とでは、仕事に対する考え方や取り組み方、信念などが根本的に異なることを痛感しました。
この書籍を読んだことで、今後の仕事に対する考え方を改める良いきっかけになりました。
もしあなたが今の職場に不満を感じているのなら、まずは自分から行動を起こしてみてはいかがでしょうか。せっかく働くなら、会社の環境も人間関係も良好な方がきっと良いはずです。
もっと深く学びたい方は、ぜひ書籍を手に取ってみてください。



本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。